TOP 投資/ソーシャルレンディング コラム匿名組合契約とは?匿名組合契約の仕組みや活用事例を解説!

近年新しい投資手法としてソーシャルレンディングやクラウドファンディングといった手法が注目を集めています。これらの新しい投資手法は少額で投資を始めることができるため、若い投資家の参入も促しています。

ソーシャルレンディングやクラウドファンディングの仕組みを理解するうえで、必ず知っておきたいのが匿名組合という形態です。当記事では投資を始める際に知っておきたい匿名組合の仕組みを解説します。

匿名組合契約とは

契約をする2人の男性の画像

匿名組合契約とは投資家と事業者が結ぶ契約のことです。投資家は事業者と組合員となることを契約します。その際、あくまで、投資家は事業者との一対一の契約になりますので、他の組合員の情報を知ることはありません。

POINT

匿名組合契約の「匿名」の意味はあくまで、組合員間でどのような人が組合員となっているかがわからないのであって、事業者に対して匿名であるわけではありません。

組合契約は法人と個人の場合で契約する場合と個人と個人で契約する場合があります。

ただし、組合契約を行う相手方は通常、何らかの事業を行っていることが多いため、法人であることが多いでしょう。組合員となった投資家は、匿名組合契約に基づいて事業者が行っている投資事業の利益を享受することができます。

一方で、運用がうまくいかなかった場合には、利益が得られなかったり、損失が発生したりする可能性もあります。

匿名組合契約が利用される理由

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匿名組合契約はなぜ、利用が拡大しているのでしょうか。その理由をみて行きましょう。

低リスクで運用ができる

匿名組合契約では投資家は事業者が定める範囲で出資金を自由に決めることができます。例えば、最低出資金額が10万円の場合、10万円以上のリスクを背負うことはありません。通常事業を行う場合無限責任が問われます。

POINT

無限責任が問われる場合、その事業から発生した全ての損失を支払う必要があるのです。

しかし、匿名組合契約で出資を行う投資家は出資した額以上の損失を被ることはありませんので、有限的な責任の範囲にとどまります。

想定外の事態が発生しても損失が限定されていると言う点は大きなメリットであり、匿名組合契約を投資家が選ぶ理由の一つとなっています。

初心者や忙しい人でも参加がしやすい

匿名組合契約では投資家が事業者に出資をしますが、出資された資金は事業者が自らの判断で運用します。当然、匿名組合契約を行う際に、投資のスタンスやどのようなものにどれくらい運用するかは記載されていますが、出資した後の細かい方針は事業者に「お任せ」となるのです。

その事業に精通している事業者に運営を任せることができると言う点は、初心者や忙しい人にとっては大きなメリットとなります。投資を始めたくても、どのように運用していいか分からない方や、普段は忙しくて投資ができない人も匿名組合契約であれば投資を始めやすいと言えるでしょう。

匿名で投資ができる

匿名組合契約はその名の通り、匿名で投資を始めることができます。そのため、事業者以外に誰がその事業に出資をしているかはわかりません。
法人の場合、他の企業に後悔せずに投資を行いたいケースも多くありますので、匿名で投資を始めることができると言う点はメリットの一つとなっています。

匿名組合契約のデメリット

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匿名組合契約にはメリットも多く、活用の機会が広がっています。しかし、デメリットもありますので、デメリットをしっかり理解しておく必要があります。匿名組合契約のデメリットをみて行きましょう。

事業内容に自分の意思を反映できない

匿名組合契約での投資家は出資を行いますが、出資した事業の運営に意思を反映することができません。株式投資であれば、株主には議決権が与えられ、経営に対し意見を出すことができますが、匿名組合契約ではそのような機能はありません。

全てお任せできると言う点は初心者や忙しい人にとってメリットでもある一方で、運営に意見を出したい人にとってはデメリットとも言えるでしょう。

運営が上手く行かない場合もある

匿名組合契約では出資した資金以上の損失を被ることはありませんが、運営がうまくいかなかった場合は出資したお金が返ってこない可能性はあります。事業者の腕次第で、運営がうまくいかない可能性は十分考えられますので、信頼できる事業者であるかしっかり見極めて出資をすることが重要です。

匿名組合契約では元本の保証はされず、運営次第で元本が毀損する恐れがあるということは覚えておいた方がよいでしょう。

換金が難しい

匿名組合契約では投資家が出資した権利を株式のように他人に売買することができません。匿名組合契約はあくまで、事業者と一対一の契約になっているため、換金する際も事業者に買い取ってもらう必要があるのです。

POINT

一般的に匿名組合契約を解約する場合には解約金が発生します。そのため、運営がうまくいっていたとしても換金する際に損失が発生する可能性があるのです。

匿名組合契約を行う場合は解約する際の出口戦略も見極めて投資をする必要があります。

匿名組合契約の流れ

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匿名組合契約はどのような流れで行われるのでしょうか。匿名組合契約の流れをみて行きましょう。

事業者と投資家が匿名組合契約を締結する

匿名組合契約は事業者と投資家が匿名組合を締結することでスタートします。事業者はどのような事業を運営しているか、説明を行い、投資家がその事業に将来性を感じ、収益が得られると感じたら投資をすることになります。

契約は事業者と各投資家で一対一の契約を行うこととなります。投資家は契約をすることで組合員になることができます。

投資家が出資する

契約に基づいて投資家は事業に出資をすることになります。出資の最低金額は事業者が定めています。例えば、一口10万円の事業者の場合、10万円を下回る金額で出資をすることはできません。

事業者が集めた資金を元手に事業を運営する

事業者は組合員から出資を受けた資金を元手に事業を運営します。事業者はあらかじめ定められた事業を行いますが、細かい運営は事業者が行います。そのため、組合員は運営に口出しをすることはできません。

事業者が事業から得られた利益を投資家に分配する

事業者は事業から得られた利益を投資家に分配します。運営が上手く行かなかった場合、投資家は分配を得られない可能性もあります。

匿名組合契約の活用例

例えを表すイメージ画像

匿名組合契約は事業者にとっても投資家にとっても便利な契約形態です。そのため、様々な事業に活用されています。匿名組合契約でどのような事業が行われているか具体的に確認してみましょう。

不動産投資

少額で不動産投資ができる仕組みとしてクラウドファンディングやソーシャルレンディングと言った言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。クラウドファンディングやソーシャルレンディングも実は匿名組合契約を利用した投資手法です。

クラウドファンディングやソーシャルレンディングは匿名組合契約の仕組みを利用することで、急激に利用者が増え、市場が拡大しています。そのため、不動産投資は匿名組合契約との相性がよい事業と言えるでしょう。

不動産投資に匿名組合契約の仕組みがよく使われる理由は大きく分けて3つあります。

一つ目の理由は不動産投資が高額であると言う点です。

不動産投資は通常億単位の投資となります。そのため、個人投資家にとってはなかなか手が出せない投資対象でした。しかし、匿名組合契約の仕組みを使うことで、多くの投資家が少しずつ出資することで、大きな不動産を保有することができます。

匿名組合契約を利用することで、小口の投資家も不動産投資を行うことが可能になっているのです。

二つ目の理由は不動産投資には手間が多いと言う点です。

不動産を購入しようとすると、現地の見学や契約等、様々なことを行う必要があります。また、購入後も物件のメンテナンスや修繕の計画を立てるなど多くの業務をこなしていく必要があります。

いくら資金があってもなかなか時間が割けないと言う方も多いでしょう。この点も匿名組合契約の仕組みを活用することで解消することができます。

匿名組合契約では投資家は出資さえすれば、あとは事業者に丸投げすることができますので、管理の手間は必要ありません。

POINT

また、不動産を保有する場合、登記が必要となります。

登記をすることで、対外的に不動産を保有していることを示すことができますが、登記には費用や手間がかかります。

匿名組合契約では不動産を保有しているのはあくまで事業者となりますので、投資家が登記をする必要はありません。

登記をする必要がないと言う点も投資家にとって大きなメリットとなるでしょう。

三つ目の理由は不動産の安定した収益性にあります。

不動産の主な収益源は売買の差益で利益を得る「キャピタルゲイン」と毎月の賃料収入等で利益を得る「インカムゲイン」があります。不動産投資の魅力は長期間安定的に得られることができる「インカムゲイン」であると言われています。

匿名組合契約では出資した投資家は組合員として長く投資をする傾向があります。不動産は長期にわたって少しずつ利益を得ていく投資手法ですので、匿名組合契約との相性が良いと言えるでしょう。

オペレーティングリース

不動産投資と並び、頻繁に匿名組合契約が活用されるのが、オペレーティングリースです。オペレーティングリースとは航空機や船舶などの大型リースのことですが、匿名組合契約の仕組みがよく利用されます。

オペレーティングリースでは航空機や船舶などを法人に貸し出して、リース料を収益として組合員に分配する仕組みとなっています。オペレーティングリースで匿名組合契約を利用する理由は大きく分けて二つです。

一つ目の理由は金額が大きいものを購入する必要があると言う点です。

航空機や船舶は高額となりますので、匿名組合契約の出資を募ることで資金を集めることが可能です。

二つ目の理由は節税のために利用できると言う点です。

オペレーティングリースで使用される航空機や船舶は減価償却の対象となります。また、減価償却の金額はリース料を上回る場合も多く、業務としては損失として計上することが可能です。

POINT

オペレーティングリースで損失をだすことによって他の事業で利益を得られている場合は、損益通算ができるため、節税につながります。

減価償却は帳簿上では損失となりますが、実際にお金が出て行っているわけではありませんので、帳簿上損失を出して、節税をしながらもキャッシュフローは良好に保つことが可能です。

オペレーティングリースは、匿名組合契約の仕組みを活用することで、利益を得るだけでなく、節税にも利用することができる手法です。

太陽光発電

太陽光発電でも匿名組合契約の仕組みが利用されるケースがあります。太陽光発電では投資家が事業者に出資を行い、事業者は集めた資金で太陽光発電設備を整えます。事業者は電力会社に売電して得た利益を組合員に分配するという仕組みです。

太陽光発電は不動産投資やオペレーティングリースと同様、多額の資金が必要です。匿名組合契約の仕組みを活用することで事業者は設備投資の資金を集めることができるのです。また、太陽光発電は長期に渡って収益を上げられる可能性が高い事業です。

景気の影響なども受けにくい投資対象ですので、他の投資性資産との分散としても魅力ある投資と言えるでしょう。

まとめ

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匿名組合契約は事業者にとっても投資家にとってもメリットが大きい制度です。多くの投資家から資金を集めることで事業者は安定的に事業を行う事が可能です。個人投資家にとって少額で規模の大きい投資対象に投資ができると言う点は大きなメリットと言えるでしょう。

また、運営を事業者にお任せできると言う点も忙しい投資家にとってはメリットとなります。株式のような議決権はないため、運営に意見をすることはできませんが、運営に対してはお任せしたいという投資家にとってはさほどデメリットは感じないでしょう。

ただし、匿名組合契約では換金が難しいというデメリットがあります。また、出資した金額以上に損失を被ることはありませんが、投資対象によっては出資した金額が0になってしまう可能性もあります。

メリットも大きい匿名組合契約の仕組みを活用した投資ですが、換金性が低いことや、運営にあたってリスクがあることは十分に理解して投資をする必要があります。