TOP 投資/ソーシャルレンディング コラムクラウドファンディングってなに3つの形態とそれぞれの法律関係を解説!

人生100年時代と言われ、自分で資産形成をする必要性が高まっています。また、従来資産形成の主役となっていた銀行での定期預金は長らく超低金利が続きほとんど資産が増えない運用になってしまっています。

そんな中で注目を集めているのが「クラウドファンディング」と呼ばれる新しい投資手法。クラウドファンディングでは投資をしてリターンを得るものだけでなく、公共性の高いものにお金を投じることも可能です。

しかし、クラウドファンディングは新しいサービスなので仕組みを詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。実はクラウドファンディングも様々な法律上の規制の中で運営されています。

この記事ではクラウドファンディングの仕組みやメリット・デメリット。法律上の関係も詳しく解説していきます。

クラウドファンディングって何?

クラウドファンディングとはどのような仕組みで運営されているのでしょうか。まずはクラウドファンディングでどのように資金が動いていくのかを解説しますので基本的な仕組み理解しておきましょう。

クラウドファンディングの仕組み


クラウドファンディングとはお金を集めて事業を行いたい人とお金を運用したい人をつなぐサービスです。この役目は伝統的に銀行などの金融機関が担っていました。

銀行はその事業が成功しそうかどうか、その事業を行う人がしっかりと貸したお金を返してくれるかを審査してお金を貸します。銀行を通すことで信頼できる会社にお金を貸すことができます。

しかし、銀行員の人件費や銀行の利益を差し引くため、預けている人の利益は少なくなってしまいます。一方で「クラウドファンディング」は事業を行う人がインターネットなどで、事業の紹介文や紹介動画を掲載して直接投資を呼びかけます。

多くの人から少額の投資を少しずつ集めることで大きな資金を集めることが可能です。クラウドとは「群衆」を意味する言葉で一人の人ではなく多くの人から少しずつお金を集めることからこの言葉が使われています。ファンディングは「資金調達」を意味する言葉。

クラウドファンディングは多くの人から資金調達をすると言う新しい金融の形です。インターネットで簡単に情報を得られる時代だからこそできる手法。クラウドファンディングによって以前に比べると事業を始める際にお金が集まりやすくなっています。

クラウドファンディングの形態

クラウドファンディングには様々な形態があります。クラウドファンディングにはどのような形態があるのか確認してみましょう。

購入型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングは出資者がお金を出す代わりに事業を行う人は商品やサービスを提供するというものです。出資者は商品やサービスを受けられる対価としてお金を払うことになりますので、自分が気にいるか否かで出資するか否かを判断することになります。

日本のクラウドファンディングサービスではこの「購入型」が最も多く利用されるクラウドファンディングサービスの形態です。購入型で大手のクラウドファンディング業者はmakuake(マクアケ)が有名です。

makuakeの最大の特徴は運営規模の大きさ。海外でも高い知名度を誇ります。また、Amebaブログ等を運営しているサイバーエージェントが運営しているため、運営母体も安心で、Amebaブログを活用した広範囲の情報発信が可能です。

makuakeは規模が大きいため、様々な事業が紹介されています。革新的なものも多く興味をそそられるものもきっとあると思いますので、一度覗いてみてはいかがでしょうか。

URL:https://www.makuake.com/

投資型クラウドファンディング

投資型クラウドファンディングとは事業を行う人に投資家は出資をして事業が成功した際には出資した以上のリターンを得られるという仕組みです。投資型のクラウドファンディングは株式などの投資と目的は同じで金銭的なリターンを得ることです。

そのため、出資者はその事業が成功するか否かを見極めて投資を行います。投資型クラウドファンディングでは「クラウドクレジット」が有名です。クラウドクレジットの特徴は海外の投資案件を多く抱えていることです。

海外の案件は日本よりも利回りが高いことも多く、高リターンが期待できます。ただし、高リターンが期待できるということは裏返すとリスクが高いということでもあります。

海外の投資案件では事業のリスクだけでなく為替によるリスクもありますので、利回りだけで飛びつくのは危険です。クラウドクレジットのもう一つの特徴は伊藤忠商事と資本業務提携をしているということです。

伊藤忠商事は日本を代表する大手総合商社です。資本力のある大手企業と資本業務提携をしているということは投資家にとっても安心に繋がります。

URL:https://crowdcredit.jp/

寄付型クラウドファンディング

寄付型クラウドファンディングとは寄付を通じて事業を応援する仕組みです。寄付型クラウドファンディングはふるさと納税のような返礼品があるものもありますが基本的に購入型クラウドファンディングや投資型クラウドファンディングのようにリターンを求めるものではありません。

寄付型はお金を出すことによって、事業の参加者となり、共感できる応援したい事業を一緒に成功させることが目的となります。また、寄付型クラウドファンディングで支払った金額は寄付金控除の対象となりますので、一定額が所得から差し引かれ、節税になります。

寄付型クラウドファンディングとして代表的なのは「ふるさとチョイス」というサイトです。ふるさとチョイスで取り扱っている案件は全て自治体で構成されており、寄付先として心配ありません。

ふるさと納税と同じ仕組みをつかっていますので、返礼品も期待できます。ふるさとチョイスは寄付したお金をどのように使うかまで、全ての案件で明記されていますので、返礼品だけでなく、お金の使い道にもこだわりたい人にはオススメです。

URL:https://www.furusato-tax.jp/gcf/

プロジェクトを実施して出資を募る人にとってのメリット・デメリット


クラウドファンディングは従来の資金調達手段と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。資金調達を行う側から見たメリットを確認しておきましょう。

主なメリット

新しいサービスであるクラウドファンディングには従来の資金調達には無い様々なメリットがあります。まずはメリットを確認しておきましょう。

返済の義務がない

クラウドファンディングで行う資金調達は銀行での借り入れのように「いつまでにいくらずつ返済する」などの返済義務がありません。新規の事業はいくら良いアイデアや技術を持った事業でも利益をあげるまで時間がかかるものです。

事業に共感してくれた個人の投資家は長期間見守ってくれることが多いので、じっくりと事業を育てることができます。

従来型の資金調達では返済義務に追われて、技術やサービスの改善ができないこともありましたが、このような心配がないということは新しく事業を始める方にとって大きなメリットとなります。

熱意や想いが伝われば資金調達ができる

銀行などの金融機関で資金調達を行う場合は事業の実現性や返済能力をシビアに審査されます。一方のクラウドファンディングはお金を出すのは個人投資家です。熱意や想いが伝わり、出資したいという人がいれば出資してくれる人がいます。

事業を運営する人は動画などを使って人々の感情に訴えることで資金調達を行っています。例え、今は実効性が低くても将来的に共感してくれる人が増えて、事業のファンになってもらえば、一大ムーブメントが沸き起こる可能性もあります。

クラウドファンディングを活用した資金調達は従来型の資金調達では銀行審査の対象にはならない、「想い」も重要な要素となってきます。

出資者を募る行為がそのまま宣伝になる

クラウドファンディングで多くの出資を募るためにはインターネットなどのメディアを使って、多くの人にサービスの重要性や商品の良さを訴えることになります。出資者を募る行為はそのままサービスや商品の宣伝に繋がることが多いのです。

出資をしてくれた投資家はもちろん、出資までには至らなくてもサービスや商品のファンになってくれる人が現れる可能性も十分あります。

事業を始めて間もない頃は認知度向上や顧客の獲得が喫緊の課題になることが多いため、出資の段階でこれらを行える意味は非常に大きいものです。

また、クラウドファンディングで募集に使う動画やページの作成には作成費用がかかりますが、作ったものはそのまま広告宣伝にも流用することも可能となります。

SNSなどで出資者や見込み顧客との交流ができる

クラウドファンディングはインターネットで募集を行うため、SNSとの相性が、良いのも大きなメリットです。出資者や見込み顧客との交流を図ることで商品やサービスの改善に繋がる意見が得られることもあります。

また、クラウドファンディングで出資をする方は比較的ITリテラシーが高い層です。今やマーケティングにwebでの拡散は必須となっています。ITリテラシーが高い顧客を増やすことにより、SNS等で拡散するインフルエンサーになってくれる可能性もあります。

主なデメリット

メリットも大きいクラウドファンディングでの資金調達ですが、デメリットもあります。クラウドファンディングで資金調達をする際のデメリットを確認しておきましょう。

十分な出資金額集まらない場合もある

銀行などの融資の場合は審査が通れば希望額の融資を受けることができます。しかし、クラウドファンディングは多くの人が少しずつ出資するため、最終的に目標金額に到達するかどうかは時間が経たないとわかりません。

場合によってはある程度の出資者を集められても目標金額に到達しないということもあります。募集をかけてみないと目標金額に到達できるかわからないという点はクラウドファンディングで資金調達をするうえでの大きなデメリットとなるでしょう。

お金が集まるまで時間がかかる

クラウドファンディングでの融資は非常に時間がかかります。通常募集をかけてから実際にお金を使えるようになるまで4カ月〜5カ月程度かかります。

資金調達まで時間がかかるということは商品やサービスの開発までに時間がかかるということです。クラウドファンディングでは多くの人に呼びかけて出資するため、アイデアを模倣して誰かが別の商品やサービスを開発する可能性もあります。

新たなニーズを捉えた新規事業はスピード勝負となることも多いので、開発の遅れは致命傷となる可能性もあります。

銀行の融資を受けているという信頼は得られない

新規事業を始めるうえでは信頼を得る事が非常に難しいもの。銀行の融資を受けているということは厳しい査定を行う銀行の審査を通過しているということですから、取引先や顧客にも一定の安心感を与えることができます。

クラウドファンディングは急速に広がってはいるものの、新しいサービスですので銀行融資に比べると信頼感が劣るのは事実です。

出資をする人にとってのメリット・デメリット


クラウドファンディングは新しい投資手法として急速に拡大しています。クラウドファンディングは投資するに値するサービスなのでしょうか。出資する人にとってのクラウドファンディングのメリット・デメリットを確認おきましょう。

主なメリット

出資を行う投資家は何故クラウドファンディングにお金を出しているのでしょうか。クラウドファンディングで投資を行う際のメリットを見ていきましょう。

革新性の高いサービスや公共性の高いサービスに少額で手軽に出資できる。

クラウドファンディングで出資を募っている事業は革新性の高いサービスや公共性の高いサービスがほとんどです。このようなサービスは「アイデアや技術はあるけども、お金が無いから実現できない」ということが多くありましたがクラウドファンディングの仕組みを使うことで資金調達をしやすくなりました。

従来の金融サービスではこのような事業に出資をすることは困難でしたが、クラウドファンディングの仕組みを使うことで共感できるサービスに少額で手軽に出資することができます。

新しいサービスやこれから社会を変える可能性があるようなサービスにも立ち上げから関わることができるということは出資者にとっても喜ばしいことです。

高いリターンを得ることができる

日本では長年超低金利の時代が続き定期預金ではほとんど増えない時代が到来しています。その中で、クラウドファンディングで得られるリターンは相対的に高いものであり、十分魅力があると言えるでしょう。

購入型や投資型のクラウドファンディングは定期預金などに比べると高いリターンを得ることができます。出資額に応じてリターンを得られることはお金を出す人にとっての最大のメリット。リターンを目的に出資をする投資家も数多く存在します。

購入型においては誰も手にしたことが無い革新的な新しい商品やサービスを使えるという点も嬉しいメリットです。また、寄付型においては所得税の控除制度もあります。

寄付型クラウドファンディングにおける所得税の控除制度については後程詳しく解説します。

主なデメリット

クラウドファンディングへの出資は出資者にとってどのようなデメリットがあるのでしょうか。出資者にとってのクラウドファンディングのデメリットを確認しておきましょう。

資本力が無い事業に出資するため出資したお金が返ってこないこともある

クラウドファンディングで資金調達をしている事業は銀行などで融資を受けることができない企業が多くあります。つまり、銀行から融資を受けることができないということは資本力が弱いということです。

資本力が弱い事業に出資をするわけですから当然帰ってこない可能性は高くなります。期待しているリターンどころか出資した元本も返ってこない可能性もあります。

クラウドファンディングはリターンも大きいですが、リスクも大きいということは理解しておきましょう。

資金が集まらず事業が実施されない可能性もある

クラウドファンディングは多くの人からお金を集める仕組みです。そのためお金を集めることができなければ事業を始めることすらできません。

すごくいい商品・サービスだと感じて出資をしたとしても共感する人が少なければ出資した事業が実行されることなく終わってしまう可能性もあるということです。クラウドファンディングで資金調達を行う事業は基本的に資本力がある大企業ではありません。

そのため、お金が無ければ事業を始めることすらできないこともあり得るのです。

クラウドファンディングの法律規制


既にご説明した通り、クラウドファンディングには3つの形態があります。それぞれのクラウドファンディングではその特徴や契約形態に準じて、様々な規制がかかっています。それぞれどのような規制があるのか確認してみましょう。

購入型クラウドファンディングの法律規制

購入型クラウドファンディングにはどのような法律規制があるのでしょうか。

  • 事業者(プロジェクト実施者)
  • クラウドファンディング業者
  • 出資者

上記の3者に分けて見ていきます。まずは事業者にかけられる法律規制を確認しておきましょう。

事業者(プロジェクト実施者)

購入型クラウドファンディングを行う事業者は二つの法律を念頭に置いておく必要があります。一つ目は「特定商取引法」です。特定商取引法とは消費者を保護するための法律です。

購入型クラウドファンディングはインターネットを通じて商品を購入するということから法律上、「通信販売」にあたります。つまりインターネットやテレビショッピング等でものを販売している業者と同じ規制を受けるということです。

特定商取引法では通信販売を行う際は特定商取引法に基づく表記が必要と定めており、HP上に掲載する必要があります。

特定商取引法に基づく表記では商品の価格や送料、事業者の氏名、住所、電話番号など表示する義務が細かく決められていますので、漏れなく記載するために相当な注意が必要です。

また、購入時に取得したメールアドレスに許可なく勧誘のメールを送ることも禁止されている等、勧誘行為にも制限が課されていますので留意する必要があります。

もう一つ気を付けるべき法律は民法で定められる「瑕疵担保責任」と消費者契約法です。瑕疵担保責任とは販売したものに瑕疵(故障などの不具合)が生じた場合、誰が責任を負うかというものです。

民法では売主と買主が対等な関係である場合は契約書に瑕疵担保責任は一切負わないと示しておけば瑕疵担保責任を負う必要はないとされています。

一方で消費者契約法では一般消費者保護の観点から売主が瑕疵担保責任を一切負わないと契約書で定めることを禁じています。

つまり、事業者側がこのような免責条項を記載しても無効になる可能性が高く、販売するものに対して故障などの不具合が発生したら責任を負う可能性が高いということになります。

購入型クラウドファンディングは通信販売の形に近いため、様々な形で消費者保護の責任があるということを認識しておく必要があります。

クラウドファンディング業者

次に購入型クラウドファンディングでクラウドファンディング業者が規制される法律を確認しておきましょう。購入型クラウドファンディングのクラウドファンディング業者は資金決済法に基づく資金移動業の登録が必要となる場合があります。

クラウドファンディング業者は出資者が出したお金を事業者に送金します。この行為は為替取引に該当するため、資金移動業の登録が必要となるのです。資金移動業は円滑な資金移動を行う義務があるため高い信用力が問われます。

そのため、資金移動業の登録を行うのは様々な義務を課されます。例えば、利用者保護を図るために送金途中の資金保全のために送金中の資金と同額以上の資金を供託所に預けることが義務付けられています。

この金額は最低でも1,000万円と定められており、資金移動業者は最低でも1,000万円を供託所に収めておく必要があるということです。

しかし、手続も複雑で、資金的な負担も大きい資金移動業者としての登録はエスクローサービスという仕組みを使うことで回避することができます。エスクローサービスとは買主からお金を、売主からは商品をエスクローサービス業者が一旦預かります。

売主と買主が第三者であるエスクローサービス業者が受け取ったことを確認してからお互いにお金と商品の引き渡しができることで、「お金を払ったのに商品を受け取ることができなかった」、「あるいは商品を送ったのにお金を受け取ることができなかった」という事態を避けることができます。

エスクローサービスのフローを敷いておけば、資金移動業の登録は必要ありません。多くのクラウドファンディング業者がエスクローサービスを用いて負担が大きい資金移動業の登録を避けています。

もうひとつ購入型クラウドファンディングでクラウドファンディング業者は気を付けたいのはあくまでプラットフォームを提供していることに徹底するということです。

クラウドファンディング業者が売主と一体となって運営しているという外観となっている場合購入者である出資者に落ち度がない限り、事業者(売主)と同じ責任を課される可能性があります。

これはサービスの利用規約にクラウドファンディング業者はプラットフォームを提供しているだけであり、売主では一体でないことをしっかりと表明し、免責条項を記載しておく必要があります。

出資者

出資者は消費者保護の観点では購入する側(=弱い立場)となるため、出資者を取り締まるような法律規制はありません。

逆に言うとここまで説明した、事業者やクラウドファンディング運営業者にしっかりと法律規制を守ってもらう必要があります。

そのため、出資者側も事業者やクラウドファンディング業者の法律規制を理解し、出資することが重要です。例えば、高額の商品を購入したにも関わらず配送されていた時にすでに壊れていたとしても泣き寝入りする必要はありません。

事業者に確認する権利がありますので、必ず確認するようにしましょう。

投資型クラウドファンディングの法律規制

投資型クラウドファンディングはどのような法律規制があるのでしょうか。

事業者(プロジェクト実施者)

事業者が法律上の規制の対象となるのは大きく分けて2つのパターンに分かれます。一つ目は「集めたお金を有価証券等で運用する」場合です。この場合は「金融商品取引法」の対象となります。

金融商品取引法とは投資を行っている事業者に比べて知りうる情報が少ない投資家を守るためにある法律です。金融商品取引法の対象となった事業者は投資運用業の登録を行う必要があります。

投資運用業の登録を行うためには最低資本金5,000万円が必要となります。そのほか、金融庁による監視を受けます。

金融庁の監視では顧客に必要な情報提供をしているか、顧客に著しく有利であると誤認させるような営業活動を行っていないかなどが監視され、守られていない場合には、最悪営業活動ができなくなる場合もあります。

もう一つの規制は集めた資金で不動産を購入、そこから得た収益は出資者に分配する仕組みで事業を行うケース。このケースでは「不動産共同特定事業法」の対象となります。

事業者は不動産共同特定事業法により「不動産共同特定事業者の許可」を受ける必要があります。不動産共同特定事業者の許可を得るためには法人であること、宅地建物取引業の免許を取得しているなどの厳しい要件を満たす必要があります。

勘違いされがちですが、集めた資金で不動産を売買する場合や、賃貸借するなどの運営を行うケースは不動産特定事業にあたりませんので、不動産特定事業者の登録は不用です。

有価証券や不動産の運用には専門的な知識が必要となり、適切な情報開示や運営を怠った場合、一般消費者にとって不利益となるため、事業者としての登録が必要となります。

また、金融商品取引法や不動産特定事業法は改正される可能性もありますので、一度対応したら終わりではありません。法律の改正もしっかりと確認して対応し続ける必要があります。

一方で事業者が物づくりやアプリを活用したサービスを行うのであれば基本的に上記のような登録は必要ありません。事業者は有価証券の運用と不動産の運営をする場合のみ登録が必要となることを覚えておくと良いでしょう。

クラウドファンディング業者

次にクラウドファンディングで資金を募集するサイトを運営するクラウドファンディング業者に関する規制を見ていきましょう。投資型クラウドファンディングの募集をかけるサイトを運営する場合には「第2種金融商品取引業」の登録が必要となります。

第2種金融商品取引業とはファンドの資金調達や調達のための勧誘行為を指します。投資型クラウドファンディングを募集するサイトは事業者に資金調達の機会を提供していることから第2種金融商品取引業に該当します。

第2種金融商品取引業の登録を受けるには、資本金が1,000万円以上で、投資家を保護するために十分な人的資源や管理体制を整える必要があります。

金融取引業における商品の勧誘には金融庁の様々な監視を受けるため、金融業界の経験者無くして、投資型クラウドファンディングサイトを立ち上げるのは非常に難しいと言えるでしょう。

また、第2種金融商品取引業の登録を受けずにサイトを運営していた場合、5年の懲役または500万円以下の罰金という重い刑事罰を科されます。

投資型クラウドファンディングを運営する場合には第2種金融商品取引業の登録後も金融庁の監視下に置かれるため、勧誘ページの作成や勧誘行為には気をつけて行う必要があります。

出資者

事業者やクラウドファンディング業者が厳しい法規制の中で勧誘を行う必要があります。そのため、出資者は「保護される側」にあたります。

出資者が身を守るためには適切な情報開示や説明がなされているかをしっかりと確認する必要があります。出資者の立場では情報開示や説明を求める権利があるということを覚えておけば十分でしょう。

ただし、投資はあくまで自己責任です。適切な情報開示や説明を受けた上で最終的な判断を下すのは自分であるということも肝に銘じておく必要あります。

投資をした後に説明を受けていないとして金融商品の販売側と個人投資家が裁判になるケースも少なくありませんが、多くの場合、個人投資家の主張が通ることはありません。

金融商品の販売側は弁護士等と相談の上で販売用資料などを作成し、法律が問題ない説明分をHP上に掲載します。難解な言葉で長文となっているため非常に読みづらいものの、理解したものと自分で判断して購入すると、個人投資家としては抗弁することはできないでしょう。

寄付型クラウドファンディングの法律規制

最後に寄付型クラウドファンディングに関する法律規制を確認します。まずは事業者に関する法律規制を確認しておきましょう。

事業者(プロジェクト実施者)

事業者は出資者からお金を受け取った時点で税金を支払う必要があります。税金は個人と法人税で取り扱いが違いますので、それぞれ見て行きましょう。

まず、個人の場合は贈与税の対象となります。贈与税は暦年贈与と言う課税制度の対象となり、年間110万円までは基礎控除の範囲内ですので非課税。110万円を超えると以下の税率を課税されることとなります。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

国税庁HPから抜粋:http://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4408.htm

1年間で受ける贈与額が大きければ大きいほど税率は高くなっていきます。多額の寄付を受ける場合は贈与税の対象となり、多くの部分を税金として持って行かれてしまうので、注意しましょう。

法人の場合は事業者がNPO法人や公益財団法人等でないかぎり、寄付を受けた額が法人税の対象となります。なお、法人の場合も個人の場合も消費税がかかることはありません。

クラウドファンディング業者

寄付型のクラウドファンディングを行うクラウドファンディング業者は法律上の規制はありません。ただし、寄付型でありながら、過度な返戻品や換金性の高い商品券等の返戻品を送っている場合は寄付型ではなく、購入型ととられる可能性があります。

このような場合には購入型クラウドファンディングを運営している業者と同じ規制を受けますので注意しましょう。また、規制する法律がないからと言って責任が無いわけではありません。

事業者にも出資者にもサイト運営するものとしての責任を果たす義務があります。

出資者

出資者に対しても規制はありませんが、寄付する相手方によって様々な税務上のメリットを受けることができます。寄付の相手方が国や地方公共団体の場合は「寄付金控除」という制度が使えます。

寄付金控除の制度は所得から一定額を控除することで、所得税や住民税の節税に繋がります。近年は一般的となっているふるさと納税も寄付金控除の一種です。

寄付先がNPO法人の場合は「寄付金特別控除」を利用することができます。「寄付金控除」と「寄付金特別控除」は似た言葉ですが、効果は大きく異なります。結論としては寄付金特別控除の方が大幅に節税に繋がり、納税者にとって有利です。

寄付金控除は「所得控除」、寄付金特別控除は「税額控除」です。寄付金控除と寄付金特別控除の違いは所得控除と税額控除の違いと覚えてください。まず所得控除を適用できる寄付金控除は寄付した金額を所得から差し引くことができます。

所得税は所得税×税率で計算しますので、「所得控除額≠節税額」となります。一方の税額控除は税額控除の金額を支払う所得税から指し引くことになります。そのため「税額控除額=節税額」となり、税額控除の効果は所得控除よりも効果が大きいのです。

まとめ


クラウドファンディングの仕組みや投資型、購入型、寄付型、3つの累計とそれぞれのメリット・デメリット、法律規制をご紹介しました。クラウドファンディングは比較的新しい仕組みです。

新しい仕組みだからこそ、今までのサービスには無かった大きなメリットがあります。一方で今までの資金調達には無かったデメリットも当然あります。

メリットだけに目が行くことなく、デメリットもしっかりと理解したうえで利用するようにしましょう。また、クラウドファンディングには様々な法律規制があります。一口にクラウドファンディングと言っても、その形態によって大きく関連する法律は異なります。

クラウドファンディングで資金を調達しようとしている方は、事業を立ち上げる前に自分が行っている事業がどのような法律規制を守らなければならないかしっかりと確認しておく必要があります。

また、出資する方は自分の身をしっかりと守るために知識をつけておく必要があります。法律の規制があっても、出資者が訴えなければ泣き寝入りの可能性もあります。

基本的に法律では出資者を保護するような形になっているため、事前に知っておくことでトラブルを未然に防ぐことも可能になるでしょう。どのようなサービスがどのような規制に関わってくるのかしっかり理解することが非常に重要です。

クラウドファンディングはインターネットが普及した社会では便利な資金調達の手段であり、出資者にも大きなメリットがあります。そのため、今後もクラウドファンディングは発展を続けていくと思われます。

是非、クラウドファンディングについて理解を深めていただき、挑戦してみてください。