TOP 投資/ソーシャルレンディング コラム投資型クラウドファンディングとは?金融商品取引法による光と陰

クラウドファンディングという言葉がマスメディアなどを通じて世に知られるようになったのは、日本各地で震災が続いた時ではないでしょうか。「クラウドファンディングで集まった復興支援金で町を再生します」と感謝を述べる映像も記憶に新しい気がします。

もともとは寄附のイメージが強かったクラウドファンディングですが、近年では投資型のクラウドファンディングが急増しています。配当金やリターンによる儲けと元本割れするリスクを含む投資型クラウドファンディングは、新しい形の集団投資スキームとして注目されています。

ここでは、投資型クラウドファンディングについて詳しく見ていきながら、それらの急速な拡大をもたらした金融商品取引法改正の光と陰について解説していきます。

投資型クラウドファンディングとは


クラウドファンディングは大きく2つに分類することができます。ひとつ目は寄付型や購入型といわれるもので、金銭的なリターンはありません。もうひとつはリスクもリターンも伴う投資型 になります。なぜ今、投資型のクラウドファンディングが広がりをみせているのでしょうか。

その理由に、ベンチャー企業支援の一環として2014年に金融商品取引法が改正したことがあげられます。開業資金や運転資金などの資金調達が必要な駆け出し企業は、銀行からなかなか融資を受けることができない現状があります。

バブル崩壊後、不良債権の回収に苦戦した銀行が、信用のない企業への融資を渋るようになったからです。これでは資金に乏しいベンチャー企業やスタートアップ企業が育たず、経済が活性化しません。

そこで金融商品取引法の改正が、ベンチャー企業の追い風となる新たなスタイルを生み出したのです。銀行では融資の受けづらい企業に、個人の投資家によって募られた投資ファンドからお金を借りるという新たなスタイル。

これが、投資型クラウドファンディングです。法規制の緩和で、個人投資家と投資先をコーディネートする業者の参入ハードルが下がり、金融商品としての投資型クラウドファンディングの拡大へと繋がったのです。

3種類の投資型クラウドファンディング

一般的に投資といえば、株式投資や不動産投資、FXなどがありますが、投資型クラウドファンディングにはどのような種類があるのでしょうか。投資型クラウドファンディングと呼ばれるものは大きく分けて3つあります。

  • 株式型
  • ファンド型
  • 融資型

これら3つの特徴を説明していきます。

未公開株の買い付けによる株式型

金融商品取引法の改正により、上場株を持たない中小企業の未公開株を購入して投資できるようになりました。これが株式投資型クラウドファンディングです。

上場株は盛んに売買されますが、未公開株はなかなか売却できないというリスクを含んでいます。その上、上場しないまま終わってしまえば、未公開株はほとんど価値がないまま終わってしまいます。

しかし、投資先の企業が株式上場を果たせば、株の価値は買い付け時の数倍〜数十倍に膨れ上がることもあります。つまり、株式投資型クラウドファンディングはハイリスク・ハイリターン商品といえます。

また、個人投資家が株式を購入するため、プロジェクト単位で投資するかどうかを決めることはできません。

金銭的なリターンを得る寄付型融資のファンド型

社会貢献やプロジェクトへの賛同によって、そのプロジェクトや取り組みなどに投資するものをファンド型クラウドファンディングといいます。リターンの金額や金利も決まっておらず、実際に売上が出た場合に配当を受け取るといったシステムです。

対象プロジェクトは国内にとどまらないので、リターンをあまり重視せず、夢やロマンに寄付するような思いで投資する場合が多いようです。

企業への貸し付けを行う融資型

銀行の代わりに個人投資家が企業に融資して、その金利をリターンとして受け取るのが融資型クラウドファンディングです。融資を受けたい企業と資産運用したい個人投資家の仲介にクラウドファンディング運営会社が入り、金利を分配してくれます。そのため、分配金は源泉徴収されています。

クラウドファンディングで募られた資金を企業に貸し付け、企業側は決められた金利と返済額を返済していきます。企業が存続して返済を続ける限り、個人投資家には定額の分配金が入るという仕組みです。

一見すると安定しているようにも思えますが、もし投資先の企業が倒産すれば、出資金も回収できなくなるというリスクがあります。

金融商品取引法改正と投資型クラウドファンディング

投資型クラウドファンディングが金融商品と位置付けられ、急速に拡大した背景には金融商品取引法の法律改正にあります。ここでは、金融商品取引法の改正と投資型クラウドファンディングの関係について詳しくみていきます。

クラウドファンディング運営会社の位置付け

投資型クラウドファンディングを行う場合、いずれの種類であれ、個人投資家と投資先の間にはそれを仲介する業者が存在します。投資型クラウドファンディングの場合は、クラウドファンディング運営会社が仲介業者となります。金融商品取引法の中では金融商品取引業者と位置付けられます。

かつては規制が厳しく、参入が困難だった金融商品取引業ですが、2015年の法律改正により「第一種少額電子募集取扱業」「第二種少額電子募集取扱業」という新たな参入枠が広がりました。

株式型クラウドファンディングを行う場合は「第一種少額電子募集取扱業者」の登録が必要となります。また、融資型やファンド型の投資型クラウドファンディングを行う場合は、「第二種少額電子募集取扱業者」の登録が必要です。

新たに参入したこれら2つの取扱業者に対して具体的にどのような規制緩和がなされたのでしょうか。

規制緩和の具体的内容

ファンド持分の発行価格の総額が1億円未満で、投資額は投資家ひとりにつき50万円以下という規定に基づいた少額電子募集取扱業者。投資家の募集から申し込みといった一連の作業を全てインターネット上で行う必要があるため電子募集取扱業者と名付けられています。

第一種においては、規制前最低資本金5,000万円以上だったところ、法改正により1000万円以上で登録できるようになりました。第二種においては、規制前最低資本金1,000万円以上だったところ、法改正により500万円以上で登録できるようになりました。

ファンド型クラウドファンディングは個人投資家から集めた資金で投資を行い、発生した収益を分配します。金融商品取引法の規制対象になるこの仕組みを集団投資スキーム持分といいます。そのため、集団投資スキーム持分であるファンド型には第二種電子募集取扱業者の登録が必要となるのです。

さらに、兼業規制も無くなったことで、他業種からの参入が容易になりました。

金融商品取引法改正がもたらしたメリット・デメリット

経済の活性化を見込んだ金融庁の法改正は、リスクマネーの流れを変えました。この法改正によって投資型クラウドファンディング市場は巨大化すると予測されていたのですが、思いのほか足止めを受けている印象があります。

ここでは金融商品取引法改正がもたらしたメリットとデメリットについて解説していきます。

金融商品取引法改正がもたらしたメリット

法改正による規制緩和で、多くの企業が投資型クラウドファンディング事業へ参入を果たしました。仲介業者が増えることによりクラウドファンディングの種類も増え、多くの個人投資家が投資型クラウドファンディングに資金を注ぎ込んだのです。

中小企業支援のための資金調達や、ご当地産業へのエールを込めたファンド形式の投資など、様々な形で投資型クラウドファンディングを活用したビジネスが展開されています。

金融商品取引法改正がもたらしたデメリット

参入ハードルが下がり、多くの業者が投資型クラウドファンディング事業に乗り出したことで、市場は活性化したように思えましたが、一方で弊害が生まれました。

資本金500万円で登録ができる第二種電子募集取扱業者は、個人レベルで届けられるほど資金が低いことが災いして、信用力や運用力のない業者の参入が目立ちました。

不透明な取引により行政指導を受ける業者が増えただけでなく、登録すらしていない架空業者の参入までみられました。金融商品に最も重要な「信用」の根幹を揺るがすような事態が相次いだことで、投資型クラウドファンディングへの不信感が市場に広まりました。

個人資金を起業家支援や経済活性化に活かすはずの金融庁の政策が、結果的には市場の混乱を招くことになったのです。

今後の投資型クラウドファンディングはどうかわる?

投資型クラウドファンディングと金融商品取引法が深く結びついていることがお分かりいただけたでしょうか。投資家の参入意欲を回復して、投資型クラウドファンディングでリスクマネーを循環させるためには、市場の信頼回復が急務です。

そこで、金融庁は新たな政策として投資案件の透明性の向上に努めるとしています。具体的には、必須義務ではなかった融資される企業の情報開示を必須にするといった事です。

今まで匿名が前提であったことを考えると開示される事は画期的だといえます。クリアな運営を行っているクラウドファンディング運営会社も、情報開示という取り組みに賛同しており、市場の透明化は急ピッチで進むでしょう。

まとめ

法改正により、一気に市場が拡大した投資型クラウドファンディングでしたが、それと同時に信用を失うことになってしまいました。

今後、金融庁が投資家保護の視点で市場のクリーン化をはかっていくことで、信用回復と投資家を呼び戻すことができれば、投資型クラウドファンディング事業はさらなる拡大をみせるでしょう。