TOP 投資/ソーシャルレンディング コラム不動産投資の収益目安となるイールドギャップ数字に惑わされないために知っておくべきこと

不動産投資に参入するためにセミナーに参加したり、書籍を読んだりしながら勉強していくと、いくつもの不動産投資の専門用語に遭遇します。これらは非常に重要ですが、耳慣れないものが多く理解にたやすくありません。

今回は、重要かつ理解が難しい専門用語「イールドギャップ」について、不動産投資初心者の方にも理解できるように説明していきます。イールドギャップが示す数字の意味や重要度がわかれば、投資物件選定の仕方や自分の中での不動産投資の基準がみえてくるでしょう。

不動産投資だからこそのイールドギャップ


不動産投資において一つの指標となるイールドギャップ。不動産投資で実際の収益を計算するのはとても複雑です。そのため、イールドギャップは投資に対する収益を簡単に数値化するものとして利用されます。

イールドギャップとは

イールドギャップ = 投資利回り - 長期金利。イールドギャップとは、投資利回りと長期金利の差のことで、この数字が大きければ大きいほど安定した不動産投資を行うことができます。ここで注目したいのは、融資の条件がいかに重要になるかということです。

不動産の利回りがどんなに高くても、金利が高ければ大きな利益は見込めません。不動産投資において利回りの高い優良物件と条件のいい融資は重要なカギとなります。

イールドギャップとレバレッジ投資

そもそもイールドギャップで投資の目安を図ることができるのは、不動産投資が融資を受けて行うレバレッジ投資を前提としているからです。少ない元手でも融資を受けることで、元手に見合わない大きな不動産を手に入れることができる不動産投資。

基本的には物件投入額が大きくなるにつれて、その分収入額も増加します。そのため、元手金額と購入物件価値の差が大きければ大きいほどレバレッジのきいた投資といえます。融資前提の不動産投資だからこそ、利回りから長期金利を差し引いたイールドギャップという数字が目安となるのです。

投資利回りで注意しなければならないこと

不動産投資で使われる利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。表面利回り = 年間の家賃収入(現在入居している家賃レートで計算)÷ 物件価格しかし、これらには固定資産税や管理委託料などの経費支出は含まれていません。

実際に投資物件を運用していくには、メンテナンス費用や、共用部の電気代や水道代(1棟ものに限る)といった類の雑費もかかるのでしっかりと下調べをしておきましょう。これらの経費が計上されていない表面利回りは、実質利回りよりも高い数字になるのです。

イールドギャップ算出の際に使用するのは実質利回りであることを念頭に入れ、家賃収入から経費を引いた収入額を出すようにしましょう。業者によっては表面利回り計算でイールドギャップを提示して、あたかも利益が出るかのように説明してくる場合があります。

たった数%程度の話かもしれませんが、投資金額の大きい不動産投資においては非常に重要です。

長期金利で注意しなければならないこと

金利は数字でとらえることができますが、融資条件をふまえた長期金利という考え方をするとイールドギャップに現れる数字の見え方が少し変わってきます。融資条件で重要となるのは、金利と返済期間です。

返済期間が長くなるということは元本がなかなか減らないことになり、トータル的に利息をたくさん払うことになります。そのため、イールドギャップ算出にも返済期間を反映させた金利を使用する必要があります。

借入金に対する年間返済額の比率はローン定数といわれK%と表記されます。ローン定数(K) = 年間返済額(利息含む) ÷ 借入金額より信憑性の高いイールドギャップを出すためには、実質利回りから上記のローン定数Kを差し引く必要があります。

イールドギャップはどのくらいあれば良いか


投資というからにはどれが優良だ安全だと言い切ることはできませんが、一般的には1~2%程度のイールドギャップを目指すという見解が見受けられます。イールドギャップが大きいほど利益が出やすいのはいうまでもありません。しかし、その数字だけにとらわせてしまうと、落とし穴に落ちてしまうことがあります。

その要因は不動産は減価償却していく資産であることにあります。年月の経過とともに評価額が下がっていくのは計算できますが、実際に空室が出たり家賃相場を下げなくてはいけなくなったり、定期的なメンテナンスや大規模修繕が必要になったりと、実質利回りに影響を及ぼす要因がイールドギャップ算出には組み込まれていないのです。

家賃下落予測や空室リスクなどを示すのは容易ではありませんが、仲介業者に尋ねたりセミナーに参加するなどして目安をつかんでいきましょう。

不動産投資の醍醐味は2つある


不動産投資で収益を得るための方法には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」という2つの手法があります。インカムゲインは毎月の家賃収入をコツコツと積み上げていく方法で、キャピタルゲインは売買益を狙う方法です。

近年はインカムゲインを狙う投資家が増えてきました。これにはバブルを経験したことが起因しています。バブル期は不動産評価額と金利が高騰状態にありましたが、実際の家賃相場に高騰が反映されることはないため、イールドギャップのマイナスを生んでしまったのです。

そのため、現金を持つ富裕層が安く買って高く売るというスタイルのキャピタルゲイン狙いが主流でした。しかしその後、バブル崩壊とともに不動産の大暴落が起こり、売却益に期待することができなくなったため、インカムゲイン狙いの投資家が増えたのです。

不動産投資を始める際は、インカムゲインを狙うのかキャピタルゲインを狙うのか、物件によって手法を変えるのかなど、ご自身の運用スタイルを考えておきましょう。

まとめ

不動産投資におけるイールドギャップの意味はおわかりいただけたでしょうか。不動産用語には一言で表現したり目安となる数字をはじき出す方法などが多々あります。しかし、不動産投資は机上論では通用しません。

実際にその物件に住む人がいて、住める環境が整って成立するものであり、インカムゲインを狙った中長期的な投資を目指すのであれば、それらを整えることも投資家の仕事といえます。

物件選定においても、日本や世界の経済状況から人口分布やインフラ整備、地域環境など様々な情報を収集して投資家としての目を養うことが大切です。イールドギャップも一つの目安として活用していきながら、広い意味での情報収集も忘れないようにしましょう。