今回はソーシャルレンディングの始まりから日本でのサービス開始、発展、今現在に至るまでのソーシャルレンディングサービスの歩みを振り返りつつ、日本での業界の展望を観ていきたいと思います。
ソーシャルレンディングの始まり
まずソーシャルレンディングのひな形として生まれたとされているのが2002年、英国で始まった「VirginMoney」です。このサービスは当初、知人同士のみでの融資を補助するサービスでした。
次に2005年、同じく英国で「Zopa」というサービスが産まれます。こちらは現在のソーシャルレンディングに近く、他人でも融資サービスを行え、Zopaを皮切りに世界的にソーシャルレンディングサービスの普及が始まります。
2006年にはアメリカで「Prosper」が誕生、2007年には欧米諸国をはじめ中国、韓国にもサービス事業者が誕生、世界的に注目されるサービスへの成長をはじめていきました。
日本のソーシャルレンディングサービスの起こり
少し遅れて2008年。日本初の事業者である「maneo」がサービスを開始しました。現在は後述のように法人向け融資を集う形式となっていますが、サービス開始当初は個人間の融資を集うサービスを提供していました。
追って翌2009年には国内2個目のサービス「Aqush」が誕生。maneo同様に個人間融資を取り持つAQUSHマーケット、そして世界的な業界最大事業者である「LenddingClub」への仲介を行うAQUSHグローバルファンド等のサービスで業界を盛り上げます。
2011年にはネットバンキングなどで有名なSBIグループが「SBIソーシャルレンディング」を開始。こちらも当初は個人間融資サービスを主軸としていましたが徐々に不動産担保ローン・証券担保ローン・再生エネルギーファンドへ切り替えて行きます。
上記3社が日本におけるソーシャルレンディング黎明期を支えた代表と言えると思います。
ソーシャルレンディング業界の急成長と問題点の発覚
金融サービスの大手であるSBIグループが参入したことにより加速度的にソーシャルレンディングサービスが注目を集めはじめた2011年
日本初事業者であるmaneoが10%以上に及ぶ貸し倒れの発生率が大きな問題となり個人間融資を撤廃し法人向け融資への転換を余儀なくされました。
maneoの問題は起きたもののソーシャルレンディング業界への注目は高まり、数年をかけ証券会社として初めてソーシャルレンディングサービスに参入した「クラウドバンク」
メキシコ等をはじめとした成長期待国や発展途上国の案件へ融資を行える「クラウドクレジット」、
不動産クラウドファンディングとして有名な「Owners Book」などの個性あるサービスも続々と登場しました。
日本にサービスが生まれて9年をかけ2017年には前年対比2.5倍にも及ぶ1316億円まで市場規模が成長を遂げました。ですが急激な市場拡大は良い側面だけでなく業界の悪い部分も明確にしました。
数多の事業者が生まれ、一部の業者での貸し倒れ、延滞などの問題が続出、特に前述のように開始倒れで一度問題となったmaneoは延滞を多発し、当時の代表取締役であった瀧本憲治氏が所有していた株式の84.95%をJトラストグループ代表藤澤信義氏への売却を余儀なくされました。
金融庁テコ入れで業界が淘汰、ユーザーライクに
サービスが失敗した事業者が続出し、トラブル続きのように見えた業界ですが、大手事業者であるSBIソーシャルレンディング、クラウドバンクなどは着実に実績を積み上げ、テレビCMでの販促活動が行えるまでに業績を伸ばしていきます。
そういった大手の成長に合わせ、追い風となる是正が2019年、金融庁より行われました。それが匿名化の解除です。
以前から金融庁より借り手の情報開示がなされている場合、貸金業法に抵触する可能性があるとされソーシャルレンディング事業者は案件の借主を秘匿しなければなりませんでした。
これにより前述のような貸し倒れが相次いでいたのですが、この状況をみて金融庁が匿名化は不要であると正式に公表しました。
これにより貸し倒れを起こすような案件を抱える事業者は淘汰され、情報の風通しが良くなり、投資家は案件の価値や将来性をしっかりと見定めた上で投資を行うことができるようになりました。
まとめ
このように日本におけるソーシャルレンディングサービスは紆余曲折を経て、現在ではユーザーにとっての使い勝手もよくなり、ますます間口を広げサービスが拡充していっています。
大きい案件もさることながら、小口1万円などの少額投資を請け負うサービスも多く、熟達した投資家の方はもちろん投資を始めたいけどまとまった資金がなかったり何から始めればいいかわからないという方にも非常に魅力的なサービスとして今後も業界の動向に注目です。